カウンセリングで患者さまからよくご相談いただく内容には、「朝の準備時間を短縮したい」や「夕方の青ヒゲを解消したい」といった理由でヒゲ脱毛を検討される方が多い印象です。その一方で、「なぜ脱毛すると毛が生えてこなくなるのか」「脱毛にはなぜ何度も通う必要があるのか」といった疑問を持たれる方も少なくありません。そこで今回は、ヒゲ脱毛の科学的な仕組みや各脱毛方法の特徴、安全に脱毛を受けるためのポイントまで、わかりやすく解説します。
【この記事でわかること】
・ヒゲ脱毛で毛が抜ける仕組み
・ヒゲ脱毛の方法と効果の違い
・髭脱毛でよくある疑問と失敗しない選び方
ヒゲ脱毛で毛が抜ける仕組み
ヒゲ脱毛の効果を得るには、毛を作り出している組織を破壊する必要があります。
単純に毛を抜くだけではなく、毛を作る工場そのものを止めてしまうのが脱毛治療の本質です。詳しい内容に関してを下記で説明します。
毛の構造と脱毛のメカニズム
毛は表面に見える部分と、皮膚の下に隠れている毛根部分に分かれています。
毛根の一番深い部分には「毛球」という部分に毛を作るための重要な組織が集まっています。
脱毛効果を得るためには、この組織を破壊することが重要です。詳しい組織細胞についてを下記にまとめてみました。
毛乳頭の役割
毛乳頭は毛を作るための司令塔です。
毛球の中心部にある小さな組織で、血管から栄養をもらって毛の成長を指示しています。
毛乳頭が「毛を作れ」という指令を出すと、周りの細胞が活発に働いて新しい毛ができます。反対に、この毛乳頭の働きを止めることができれば、毛は作られなくなります。
医療レーザー脱毛では、強い光を毛根に当てることで毛乳頭を熱で破壊します。毛乳頭が壊れると毛を作る指令が出なくなるため、新しい毛が生えてこなくなります。
毛母細胞の機能
毛母細胞は実際に毛を作る工場のような働きをしています。
毛乳頭の周りにたくさん集まっていて、毛乳頭からの指令を受けて毛を製造します。
この細胞は人体の中でも特に活発に働く細胞の一つです。そのため、ヒゲは1日に約0.3～0.4ミリという速度で成長し続けます。これがヒゲを毎日剃らなければならない理由でもあります。
脱毛治療では、この毛母細胞も重要な破壊対象です。レーザーの熱で毛母細胞が壊れると、毛乳頭が残っていても毛を作ることができなくなり、脱毛効果が得られます。
バルジ領域への作用
最近注目されているのがバルジ領域という部分への効果です。
バルジ領域は毛根の比較的浅いところ、皮脂腺の下あたりにあります。ここには毛のもとになる特別な細胞があり、新しい毛を作るための「種」のような役割をしています。
従来の脱毛は毛乳頭や毛母細胞を狙っていましたが、このバルジ領域を破壊することでも脱毛効果を得られることが分かってきました。バルジ領域は毛乳頭より浅い場所にあるため、比較的低い温度でも破壊でき、痛みを抑えながら脱毛できるというメリットがあります。
新しいタイプの脱毛機では、このバルジ領域を狙った治療が行われており、従来より痛みが少ないながらも高い効果を実現しています。
毛周期と脱毛効果の関係
脱毛効果を最大限に引き出すには、毛周期を理解することが必要です。
毛周期とは、毛が生まれてから抜け落ちるまでの一連の流れで、すべての毛がこのサイクルを繰り返しています。
毛周期は成長期、退行期、休止期の3つの段階に分かれており、それぞれの周期で脱毛への反応が大きく異なります。この周期を理解すると、なぜ脱毛には複数回の治療が必要なのか、効果的な治療間隔はどのくらいかが分かります。
周期についての詳しい内容を下記にまとめてみました。
成長期の特徴
脱毛効果：★★★★★5
成長期は脱毛効果を得るために最も重要な時期です。
この段階では毛乳頭と毛母細胞が活発に働いており、毛が勢いよく成長しています。
成長期の毛は毛根がしっかりと皮膚に定着していて、毛の色を作るメラニンという色素も豊富に含んでいます。このメラニンが脱毛レーザーの光をよく吸収するため、毛根部に十分な熱を伝えることができるのです。
ヒゲの場合、成長期は約4ヶ月から1年続きます。ただし、見えているヒゲがすべて成長期にあるわけではありません。実際に成長期にあるのは全体の約60～70%程度で、残りは退行期や休止期にあります。そのため、1回の治療では成長期の毛にしか効果を与えることができません。
退行期の変化
脱毛効果：★☆☆☆☆1
退行期の毛は成長期の毛と比べて、脱毛レーザーへの反応が大幅に低下します。
毛乳頭と毛のつながりが弱くなっているため、レーザーの熱が毛根の奥まで効率よく伝わりにくくなるのです。また、メラニンの量も減るため、光の吸収効率も下がります。
そのため、退行期の毛にレーザーを当てても十分な脱毛効果は期待できません。退行期の毛は近いうちに自然に抜け落ちる準備段階にあるため、脱毛治療を受けなくても抜けてしまう可能性が高いのです。
休止期の状態
脱毛効果：☆☆☆☆☆0
休止期の毛穴に脱毛レーザーを当てても、破壊すべき毛が存在しないため効果は得られません。
休止期は毛周期の最後の段階で、約3～4ヶ月間続きます。この期間中、毛の成長は完全に止まり、古い毛は毛穴から抜け落ちます。毛乳頭は小さくなって活動を休み、毛母細胞の働きも停止します。
休止期の毛穴では、見た目には毛が生えていない状態になりますが、毛根の奥では次の成長期に向けた準備が進んでいます。新しい毛を作る細胞が準備を整え、適切なタイミングで再び成長期が始まります。
これが脱毛に複数回の治療が必要な理由の一つです。
退行期～休止期だった毛穴から新しく毛が生えてきたタイミングで再度治療を行う必要があります。
その間隔が約2か月ごとだといわれています。
成長期の毛のみに効果がある理由
脱毛効果が成長期の毛にだけ現れる理由は、レーザー脱毛の仕組みと関係があります。
現在主流の脱毛技術は、毛に含まれるメラニンに光を吸収させ、その熱で毛根組織を破壊するという原理で動いています。
成長期の毛はメラニンが豊富で、毛根がしっかりと定着している状態です。レーザーの光が毛のメラニンに吸収されると、その部分の温度が急激に上がり、周りの毛乳頭や毛母細胞に熱ダメージを与えます。この熱ダメージで毛を作る組織が破壊され、永続的な脱毛効果が得られるのです。
一方、退行期や休止期の毛は、メラニンの量が少なく、毛根と毛乳頭のつながりも弱くなっています。そのため、レーザーを当てても十分な熱を毛根部に伝えることができず、脱毛効果が期待できません。
この特性により、一度の治療で得られる効果は限定的となり、すべての毛を成長期でとらえるために複数回の治療が必要になります。一般的に、ヒゲ脱毛では5～15回程度の治療回数が必要で、毛周期に合わせて約6～8週間間隔で治療を受けることが推奨されています。
髭脱毛の方法と効果の違い
ヒゲ脱毛にはいくつかの方法があり、それぞれ異なる仕組みと特徴を持っています。
適切な脱毛方法を選ぶためには、各方法の効果や特徴を詳しく知ることが大切です。
医療レーザー脱毛の効果
医療レーザー脱毛は、永久脱毛効果が期待できる最も効果的な脱毛方法です。医療機関のみで施術が可能であり、高出力のレーザーを使用することで毛根をしっかりと破壊します。
ヒゲ脱毛で主に使われる医療レーザーには2つのタイプがあります。
1つ目はアレキサンドライトレーザーで、755nmの波長を持ち、メラニンへの吸収率が高いため、色の濃いヒゲに特に効果的です。治療時間が短く広い範囲の処理が可能ですが、色の薄い毛や日焼けした肌には適さない場合があります。
2つ目はヤグレーザーで、1064nmという長い波長を持つのが特長です。皮膚の深部までレーザーが届くため、毛根が深いしぶといヒゲや、多少日焼けした肌にも適しています。メラニンへの吸収率は他のレーザーより低いものの、色素沈着のある肌でも安全に施術できる利点があります。ただし、痛みを感じやすいため、必要に応じて麻酔を使用することが推奨されます。
このように、それぞれのレーザーには特長があり、ヒゲの状態や肌質に合わせて適切な方法を選ぶことが大切です。
関連記事：医療レーザー脱毛（ジェントルマックスプロプラス）とは？
美容脱毛（光脱毛）の効果
美容脱毛（光脱毛）はエステサロンで実施される脱毛方法で、医療レーザーより出力を抑えた光を使用します。そのため痛みが少なく、肌への負担も軽減されています。
光脱毛の仕組みは医療レーザー脱毛と基本的に同じで、光エネルギーをメラニンに吸収させて毛根を破壊します。ただし、出力が医療レーザーより低いため、毛根を完全に破壊するのではなく、毛の成長を遅らせたり細くしたりする効果が中心となります。
IPL脱毛では、500～1200nmの幅広い波長の光を照射します。複数の波長を含むため、様々な深さの毛根にアプローチできますが、単一波長のレーザーと比べてエネルギーが分散するため効果が劣る場合があります。治療回数は12～18回程度が一般的で、医療レーザー脱毛の約2倍の回数が必要になることが多いです。
ニードル脱毛（電気脱毛）の効果
ニードル脱毛（電気脱毛）は確実性が最も高い脱毛方法です。毛穴に極細の針を挿入し、電気を流して毛根を破壊する方法で、レーザー脱毛が普及する以前から使用されている歴史ある技術です。
ニードル脱毛の最大の特徴は、毛の色や肌の色に関係なく脱毛効果を得られることです。レーザー脱毛や光脱毛はメラニンをターゲットにするため、白髪や金髪には効果がありませんが、ニードル脱毛では電気エネルギーで直接毛根を破壊するため、どんな色の毛でも処理できます。
治療では毛穴一つ一つに針を挿入するため、非常に精密な処理が可能です。デザイン髭を作りたい場合や、部分的に毛を残したい場合には、ニードル脱毛が最適な選択肢となります。
ただし、技術力が必要であるため、歴史のあるクリニックでないと施術はできません。
髭脱毛でよくある疑問と失敗しない選び方
ヒゲ脱毛を検討する際には、様々な疑問や不安が生じるものです。安全で効果的な脱毛を実現するために、事前に知っておくべきリスクやクリニック選びが重要です。下記で詳しく解説いたします。
髭脱毛のリスク・副作用と安全性
髭脱毛は一般的に安全な治療ですが、レーザーや光を皮膚に照射する以上、一定のリスクや副作用が存在します。これらを事前に理解し、適切な対策を取ることで、安全に脱毛治療を受けることができます。
副作用①赤みや腫れ
最も一般的な副作用は、治療直後に現れる赤みや腫れです。これは皮膚がレーザーや光の熱に反応することで生じる正常な反応で、通常は数時間から数日で自然に治まります。施術後アイスパックで患部を冷やすことで、症状を軽減できます。
副作用②毛嚢炎（もうのうえん）
毛囊炎は、脱毛治療後に毛穴に細菌が感染することで起こる炎症です。治療により毛穴が一時的に開いた状態になるため、細菌が入りやすくなります。適切なアフターケアと清潔な環境を保つことで予防できますが、症状が現れた場合は早めに医師の診察を受けることが重要です。
関連記事：脱毛で起こる毛嚢炎について｜症状から予防・治療法まで詳しく解説
副作用③色素沈着
色素沈着のリスクも考慮する必要があります。過度な出力での照射や、日焼けした肌への治療により、メラニンが過剰に作られ、シミのような色素沈着が残る場合があります。治療前後の日焼け対策と、肌の状態に応じた適切な出力設定が予防策となります。
副作用④火傷
火傷のリスクは、出力設定の誤りや肌質に合わない治療により生じる可能性があります。特に敏感肌の方や日焼けした肌の場合、火傷のリスクが高まります。治療前のカウンセリングで肌質を正確に評価し、テスト照射を行うことが重要です。
副作用⑤硬毛化
硬毛化という現象も稀に報告されています。これは脱毛治療により、逆に毛が太く硬くなってしまう現象で、詳しい仕組みは解明されていませんが、産毛などの細い毛に適切でない出力で照射した場合に起こりやすいとされています。
これらのリスクを最小限に抑えるためには、経験豊富な医師や施術者による適切な診断と治療が不可欠です。
そのためのクリニック選びのポイントを下記でご紹介します。
クリニック・サロン選びで失敗しないポイント
ヒゲ脱毛の成功は、適切なクリニックやサロン選びにかかっています。
料金の安さだけで選んでしまうと、期待した効果が得られなかったり、トラブルに巻き込まれたりする可能性があります。
ポイント①使用している脱毛機器
まず重要なのは、使用している脱毛機器の種類と性能です。
医療機関であれば、厚生労働省の承認を受けた医療用レーザー機器を使用しているかを確認しましょう。機器の種類により得意とする毛質や肌質が異なるため、自分のヒゲの特徴に適した機器を選択することが重要です。
ヒゲ脱毛に特におすすめな脱毛機器は「ジェントルマックスプロプラス」です。
ジェントルマックスプロプラスはヒゲ脱毛に効果的なアレキサンドライトレーザーとヤグレーザーを完備している唯一の脱毛機器でヒゲの状態によってレーザーを使い分けできるため少ない回数で効果的にヒゲ脱毛を行うことができます。
ポイント②技術力と経験
治療者の技術力と経験も重要な要素です。
医療脱毛の場合は医師または医師の指導を受けた看護師が治療を行います。豊富な症例経験を持つ治療者であれば、個人の肌質や毛質に応じた適切な出力設定や照射技術を提供できます。
脱毛を効果的に完了するためには、脱毛経験だけでなく、肌を熟知している必要があります。
そのため、脱毛だけでなく、肌治療も行っているクリニックを選ぶことが重要です。
ポイント③カウンセリングの質
カウンセリングの質も見極めのポイントです。
優良なクリニックやサロンでは、治療前に十分な時間をかけてカウンセリングを行い、患者の希望や肌の状態を詳しく聞き取ります。リスクや副作用についても正直に説明し、現実的な期待値を設定してくれる施設を選びましょう。
ヒゲ脱毛は、効果を実感し満足できる状態になるまでに、最低でも1年以上の期間が必要です。
そのため、ご自身が納得して治療を続けられるよう、複数（3店舗以上）のクリニックでカウンセリングを受け、比較検討したうえで、最も信頼できるクリニックを選ぶことをおすすめします。
ポイント④料金体系の透明性
料金体系の透明性も重要です。
初回カウンセリング料、治療料、追加料金、麻酔代、アフターケア用品代など、総額でいくらかかるのかを明確に提示してくれる施設が信頼できます。極端に安い料金を謳っている場合は、後から追加料金が発生しないか注意深く確認する必要があります。
これらの情報を総合的に判断することがポイントです。
難しい場合は口コミなどを参考にするのもおすすめです。
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- 4．明朗会計：金額表以外の追加費用はございません。ただし、毛質や肌質により、コース内で効果を追求するため追加回数が必要な場合がございます。
- 5．予約の取りやすさ：医療脱毛機器を5台導入しており、十分な予約枠を確保しています。
まとめ
ヒゲ脱毛の仕組みを理解するには、毛の構造と毛周期の知識が欠かせません。毛乳頭、毛母細胞、バルジ領域といった毛根の重要な組織を熱で破壊することで、永続的な脱毛効果を得ることができます。しかし、この効果は成長期の毛にのみ有効であるため、毛周期に合わせて複数回の治療が必要になります。
医療レーザー脱毛、光脱毛、ニードル脱毛それぞれに特徴があり、個人の毛質、肌質、予算、希望する効果に応じて最適な方法を選択することが重要です。医療レーザー脱毛は最も効果的で確実性が高く、光脱毛は痛みが少なく費用が抑えられ、ニードル脱毛は色に関係なく確実な効果を得ることができます。
安全で効果的なヒゲ脱毛を実現するためには、リスクと副作用を理解し、信頼できるクリニックやサロンを選択することが不可欠です。料金の安さだけでなく、使用機器、治療者の技術、アフターケア体制など、総合的な観点から判断しましょう。
ヒゲ脱毛は短期間で完了するものではありませんが、正しい知識と適切な選択により、毎日のシェービングから解放される快適な生活を手に入れることができます。まずは信頼できる施設でカウンセリングを受け、自分に最適な脱毛プランを検討することから始めてみてください。
このページの監修医師
記事医師監修
渡邊雅人
ハートライフクリニック院長
記事医師監修
渡邊雅人
ハートライフクリニック院長
日本美容外科学会（JSAS）会員
アラガン施注資格認定医
ジュビダームビスタ認定医
ジュビダームビスタボリューマXC・ボリフトXC認定医
